災害時には、「どこに、なにを、どれだけ届ければいいのか」がわからず、必要な人に支援物資が届かないケースが発生しています。そうした状況を変えるのが、支援マッチングプラットフォーム「Good Links」。平時から物と人をつなぐために大切にしていることや今後の展望について、運営元の公益社団法人Civic Force代表・根木佳織が語ります。
人が動けなくても、物が動ける仕組み
――まずは、Good Linksを運営する公益社団法人Civic Forceについて教えてください。
日本国内の災害時にひとりでも多くの人を一刻も早く救うことをテーマに、被災者を直接支援するだけではなく、支援につなげていく役割を担う調整機関として2009年に立ち上げた団体です。
災害時には被災地の行政が調整役を担いますが、彼らもまた被災者です。そのため大きな災害では、行政が機能不全になったり、不慣れかつ多種多様な業務に忙殺されたりします。そうしたときに、民間団体として支援の受け入れを補完する役割を担っています。
――具体的にはどのような活動をしていますか。
日本の企業は物資、サービス、経験、ノウハウなど、支援として提供できるさまざまなものを持っています。それらを被災者に届けるために、あらゆる分野の企業からご協力をいただいています。
ほかにも、それぞれの企業の社員の方がボランティアに来てくださったり、社員の方に募金をしていただいたり、ポイントで寄付をいただいたりといったこともあります。また、自社の商品を「寄付付き商品」として販売することでご支援をいただくなど、いろいろな形で企業との連携をとっています。
――Civic Forceが運営するGood Linksはどのようなサービスなのでしょうか。
Good Linksは、オンライン上で支援物資のマッチングを行うプラットフォームです。企業からの物資提供と、それを必要とする支援団体をつなぐ役割を担います。
以前から必要性を感じていましたが、2020年以降のコロナ禍で行動制限が行われたことが後押しとなり、2021年10月ごろからプラットフォームの開発をスタート。2022年7月からサービスを開始しました。
先述の通り、Civic Forceは災害時の支援を調整する機関です。しかし、いま想定されている南海トラフ地震のような広域災害が起きたときに、すべての被災地にCivic Forceのスタッフを派遣できるとは限りません。
また、コロナ禍で明らかになったように、感染症が拡大しているときには派遣される人たちの安全が守れないリスクや、被災地に感染を持ち込んでしまう危険性もあります。感染症も災害の一種と考えるのであれば、いつ、どの範囲で複合的な災害が起こるかもわかりません。
こうしたことから、人が動けなくても、物が動ける仕組みはかならず必要であると考えています。
平時からネットワークをつくり、災害時にそなえる
――物資を提供したい企業は、どのようにすればよいでしょうか。
まずはお気軽にお問い合わせください。企業さまごとに状況やご要望は異なりますので、詳細をうかがうために担当スタッフとのミーティングを設定させていただきます。
たとえば、一度に大量の商品を提供したいケースや、年間を通じて定期的な提供を希望されるケースもあります。あるいは、予定外の余剰品が発生したため、一度きりでのご提供を検討されている場合もあるでしょう。もちろん、災害時だからこそ特別に支援を申し出たいというご意向も考えられます。さらには、物資をお持ちでない企業さまが、新たに物資を購入して提供するという形もございます。
分量も企業さまによってさまざまです。そうしたご要望を詳しくうかがったうえで、適切な受け取り先を探してまいります。
――提供先はどのような団体ですか。
災害発生時の被災地の自治体や支援団体に加え、平時から社会的に困難な状況にある方々を支えている団体にも提供しています。
――「社会的に困難な状況にある方々」とは、どのような方を指すのでしょうか。
明確な定義は設けていませんが、生活に困窮されている方々、経済的に厳しい状況にある方々が多いのではないでしょうか。平時に支援を必要としている方々は、災害時にもかならず支援が必要となります。
物資を提供するにあたっては、支援先の団体にも事前にお話をうかがっています。災害が起きてから提供先を探し、ヒアリングを始めるのでは時間がかかってしまう。だからといってヒアリングを省略してしまうと、お預かりした物資を本当に必要な方に届けられなくなる可能性があります。そのため、平時から支援団体とのネットワークを構築し、災害時の物資の受け取り先候補を準備しておくことが重要です。
当然ながら、災害が発生していない期間のほうが長いため、平時のみの利用となる団体も多くなります。平時の利用に気後れする方もいらっしゃるかもしれませんが、生活に困窮されている方々にとっては、常に緊急事態であるともいえるのではないでしょうか。
支援団体の属性としては、経済的に困窮しやすいひとり親家庭の支援団体や、高齢者施設を運営する団体などが挙げられます。また、子ども食堂や、子どもの支援・居場所づくりを行う団体もあります。近年では、日本に滞在している外国の方々を支援する団体も増加していますね。彼らは日本での生活基盤が整うまでの一定期間、経済的に困難な状況に陥りがちなようです。こうした背景からも、平時におけるGood Linksの活用をさらに促進していきたいと考えています。
――これまで提供された物資で多かったものはなんでしょうか。
物資の種類は多岐にわたりますが、特にトイレットペーパーやボックスティッシュ、生理用品やおむつといった消耗品は、災害時でも平時でもニーズが非常に高いです。提供団体が近場で購入したほうがコストをおさえられるのではないかという意見もありますが、まとまった物量が段ボールに梱包されていると、運搬時も保管時も扱いやすくなるんです。そのため、「購入するよりも提供していただくほうが助かる」というケースが少なくありません。
災害時には、ブルーシートや給水袋、作業用の道具も多く提供されます。また、下着のニーズも高いです。過去には、発注ミスで廃棄予定だった大量の下着と靴下を提供くださった企業さまがいました。災害時には洗濯するのが難しくなるため、下着は大変重宝されます。能登半島地震の際には、カセットコンロやウレタンマット、台車なども提供しました。
――意外に喜ばれたものはありますか。
わたしたちもおどろきましたが、ノベルティのビニール製ショッパーバッグはすごく喜ばれました。避難している方はなにも持たずに家を出たケースが多く、身の回りのものをまとめるのに大きなバッグが役立つのだそうです。
また、化粧品会社のノベルティである鏡やポーチ、タオルなども好評でした。香りのいいハンドクリームや、憧れのブランドのサンプル商品などは、気持ちを上向かせ、「もう少し頑張ろう」という前向きな気持ちにつながることもあるようです。
もちろん、避難所には行政からも支援物資が届きますが、そうしたものとは異なる、避難生活にささやかな彩りを添える物資を通じて、人々を元気づけることができると考えています。
行政の備蓄は、住民が生き延びるために、想定日数分の水や食料を人数に合わせて準備するという視点が主です。しかも、その準備だけでも多大な予算と人員を割かなければならず、十分に揃えられていない自治体が多いのが現状。手鏡やポーチといった新たなラインナップを検討するほどの余裕はないんですよね。だからこそ、こうした物資の準備は、わたしたちのような民間の役割だと認識しています。今後もうまく役割分担をして連携を強化していきたいです。
企業と支援団体との連携で、誰も取り残さない社会に
――現在、Good Linksが抱えている課題はありますか?
当初は、企業さまに会員登録をしていただき、その後継続的に利用いただく仕組みを想定していました。しかし、「一度きりの提供になるかもしれない」というケースが多く、Good Linksの会員数は支援団体が64団体であるのに対し、提供企業は12社(2025年5月現在)と伸び悩んでいます。今後は、継続的な提供と会員登録数の増加を図っていきたいと考えています。
企業さまとしては、物資が適切に提供された実績を求められると思います。そのため、「提供先の団体が受領しました」と報告しています。将来的には、企業さまから「受け取った方からのメッセージや写真がほしい」というご要望があれば、対応可能な団体をマッチングさせるような体制も構築したいと考えています。「このように活用されたのであれば、次回もぜひ」と感じていただけますよね。
もちろん、提供先の団体によっては対応が難しい場合もありますし、反対に企業さまが企業名を伏せたいというケースも想定されます。そうした細やかな要望にも寄り添い、マッチングを進めることで継続的な利用を促していきたいですね。その結果、会員登録の増加にもつながり、利便性もさらに高められるはずです。
――最後に、Good Linksを通じてどのような未来を叶えたいですか。
日本は、まだ使用可能な物資が大量に廃棄されています。これは、たとえ使える状況であっても廃棄コストのほうが低いという考えと、売れるものを無償で提供することで販売が阻害されるという考えが合わさった結果ではないでしょうか。
でも、まだ活用できる物資を廃棄することは、社会全体で見れば資源の大きな損失です。また、商品を購入する層と、Good Linksが物資を提供する先とは、対象が大きく異なります。そのため、物資を提供することがかならずしも企業の営業活動を圧迫するものではないということを示していきたいです。
日本に住んでいる以上、すべての人が災害と無関係ではありません。誰もが支援される側、支援する側になり得ますし、これまで支援してきた人が支援を受ける立場になることもあるでしょう。
Civic ForceとGood Linksは、「どんな状況でも誰ひとり取り残さない」という活動理念のもと、連携を全国へと広げていきます。そして、「もったいない」廃棄を減らし、必要なものが本当に必要としている方々へ確実に届く社会を築いていきたいと思っています。人々が抱いている良心や「役に立ちたい」という想いをリンクさせる=つなげていくことが、わたしたちの使命です。